この地名が危ない

 

この地名が危ない (幻冬舎新書)

この地名が危ない (幻冬舎新書)

著者は地理学を修め、編集者を経て「地名評論家」として活躍する著述家。様々な史料を駆使しながらこれまであまり試みられることがなかった大字、小字レベルの地名から「危ないところ」を指摘し、権威ある地名辞典の誤り等を指摘している。「地名は先人が遺したメッセージである」という趣旨はわかるし、「なるほど、こういうことを調べる分野もあるのか」という点ではためになるのだが、徹頭徹尾「危ないところ探し」「私は知っていたぞ」的なトーンには、今ひとつ同調できない。
 先人のメッセージには、「危ないから気をつけろ」だけでなく、「ここは住むに良いところだ」「ここは大事なところだから荒らしてはならぬ」といったメッセージもあるはず。そうしたポジティブな伝承、地域への愛着をもたらす要素もあるだろうし、そうした研究の蓄積もあるだろうに、編集方針なのか、著者の博識を顕示したい要求なのか、そのあたりのバランスのなさが読後の後味を悪くしている。