十字架

 

十字架 (講談社文庫)

十字架 (講談社文庫)

1980年代末、14歳でいじめを苦に自殺した少年の遺書に「親友」と書かれた主人公と片思いの告白を受けた少女、そして家族のその後20年にわたる物語。いじめた側、見殺しにした側、糾弾する世間、時とともに風化する一方で、主人公は父となり、ずっと自分に十字架を突きつけてきた「あの人」(自殺した友の父)と向き合う・・・最初から最後まで重い、とにかく重い。でも、「当事者」以外は忘れ去っていくものであるという達観と、それに抗う「父」の行動は切なくもドラマチックである。ドロドロに描きつつも、最後は淡い希望を持たせるのが重松流か。
 「いじめ」とは何か、「自殺とは何か」、キャラの濃いそれぞれの登場人物に感情移入しながら色々な読み方ができる作品である。団塊ジュニア世代に特にお勧め。