今時のエリート

 

 灘中学在学中にiPhoneアプリを世に出し、無料アプリランキング世界3位になった「スーパーIT中学生」(現:高校生)と、日本のコンピューターサイエンスの草分けにして元グーグル日本法人社長の対談。
 秀才があふれる中で、自分も埋もれるまいとアプリ開発を独学で始め、アップルのプレゼンをユーストリームで翻訳実況中継する才児の進路相談に「アメリカに行くしかない」と応じる66歳。対して「とりあえず、日本の大学に行って、その上で目指してみようかな。でも、東大は嫌」とさらっとかわす17歳。日本式の「鉄板・成功モデル」が崩れつつある中、危機感は共通しているが、対処の違いがくっきりと現れている。
 現役の生徒が語る「灘高生」は恐ろしく頭が良い。それを受け止めて伸ばそうとしている教師陣もすごい。スーパー中学生が高校生となり、「その下の世代」の台頭を意識し、ネットに溺れる同世代をクールに代弁する17歳。アプリのダメ出しを自分で最低30箇所出してから直すなど、独自のポリシーとプライドを持ち、審査に納得いかなければアップルの担当者とやりあう。彼にとってはアメリカは「日常」の延長線にあるのだろう。村上氏の「アメリカすごい、日本の教育ダメダメ」論に対して時には同調し、適度に噛み付きながら「進路相談」する姿は微笑ましくもある。
 Tehu氏が語るライフヒストリーの章も面白いが、村上氏との対談というスパイスを効かせることで、今時のエリートの置かれている境遇と価値観がより鮮明に見えてくる。新書でありがちな企画だが、本書はソフトカバーの¥1500。その分、専門用語や人名には脚注がついていて、付加価値は高い。とりあえず、Macが欲しくなる本でもある。