西日本だって危ない

地震考古学―遺跡が語る地震の歴史 (中公新書)

地震考古学―遺跡が語る地震の歴史 (中公新書)

 京都の大学に入った頃に出て、地理学の学生の間で一世を風靡した本である。改めて読み返してみたが、やっぱり面白い。
 
 地震の際に起こる「液状化現象」で地層を突き破るようにして出てくる「噴砂」の後や、古墳に刻まれた倒壊跡(古墳は、見晴らしのよいところに作られるため、必然的に活断層の近くか真上になる場合が多い)を調査して、古文書と突き合わせて過去の地震マグニチュードや被害状況、断層運動のサイクルを割り出していくのが「地震考古学」である。言い伝えで想像するしかなかった過去の大災害の跡が掘り出されていく。

 圧巻なのは、豊臣秀吉が築いた伏見城をぺしゃんこにしてしまった
伏見大地震(慶長京都地震:1596年9月5日)を扱った章。震源地は生駒山付近とされているが、京都の西部の嵐山から大山崎、高槻にかけて壊滅的な倒壊をしたという。大断層と「きれいな湧き水」は表裏一体。「地震が怖くて茶が点てられるか」と、利休が言ったかどうかはわからないが、とにかく「西日本」も、大きなリスクを抱えていることは確かである。
 西に住む人は、一読を進めたい。