「先生」目線の役立つブックレビュー
- 作者: 津野田興一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2010/05/21
- メディア: 新書
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名著:「世界史映画教室」(家永知史著 岩波ジュニア:1997年)とセットで読みたい。
著者は、都立高校で世界史を教える現役の教師。「世界史を学ぶ」とはどういうことかという確固たるポリシー(これはこれでなるほどと思える)を持ち、自分の授業スタイル(19世紀からスタートして、現代まで行ってから、それ以前をさっとやる)に沿う形で「本のプリント」を発行し続けている。そのプリントをベースに作ったという本書。
「書評」というと、「本の紹介」よりも「自身の主張」とか、「読者への説教」あるいは「自分の頭の良さの披露」が前面に出がちなものが多いが、この本は、「それを読むことによってどんなことを考えることができるのか」を提示することに徹していて大変読みやすい。事件や時代の「裏話」を知り、「カルトなうんちく」的知識を増やすために本を読むのではなく、世界史を通して、「今を考えるスキルを身に着ける」ために必要な本を勧める姿勢には共感できる。また、紹介される本は、手軽に手に入る新書や文庫ばかりなのでありがたい。「本のナビ」として大変便利。
「地理版」も作るなら、どんな本を入れようか、どんな構成になるかななどと、教師なら自分の担当教科に置き換えながら、頭をめぐらせながら読んでみるのも楽しい。いろんな教科の先生が、こうやって「ブックレビュープリント」を配り出したら、日本の教育ももっと面白くなっていくのではないだろうか。