「まちおこしバブル」にかける冷や水

 

社会をつくる自由―反コミュニティのデモクラシー (ちくま新書)

社会をつくる自由―反コミュニティのデモクラシー (ちくま新書)

 地域再生まちおこし地域活性化、ふれあいコミュニティといった最近の流れ(特に地方)には「反対」(無関心)することが許されないような風潮があるが、「そもそも、近隣コミュニティが仲良く」なんてあるわけないじゃないか気持ち悪い!もっと素直になりましょうよ」という主張。確かに、「地域振興」に反論の余地を与えない昨今の風潮は、著者が言うように「翼賛」の雰囲気を感じざるを得ない。
 「地域再生の罠」でも触れられていたが、住民は正直である。「まちおこし」のイベント等には顔を出すが、決してその商店街にたくさんのお金を落とすわけではない。「コンパクト・シティ」を提唱し、都心部への回帰を促す学者や政治家に限って、自分の自宅は郊外だったりする。人と人とがふれあい、地域を盛り立てる「ふり」を続けつつ、一歩中に入れば噂好き、嫉妬と村八分の「ムラ社会」。嫌気がさした若い衆が都会に逃げ出すのを止めることはできない。

 では、どうすればいいのかという方法論に関して、今一つよくわからないところもあったが、とにかく、新聞やその手の本があおるような「逆境に負けずがんばってる地方」「地方が日本を変える」的なステレオタイプをうのみにするのではなく、「うちらのことはうちらで考えていこうや。どうせ“全員が納得”なんてありえないんやし」というスタンスは大事にしていった方がよいと思った。