弱音と失敗談に深い共感を覚えるビジネス書

裸でも生きる2 Keep Walking私は歩き続ける (講談社BIZ)

裸でも生きる2 Keep Walking私は歩き続ける (講談社BIZ)

 第1作に比べて、つまんないとか、淡々としているとかAmazonの批評はあまりよろしくないが、自分自身はこの「2」の方がはるかに面白く読めた。
 1でもそうだが、著者はフェアトレードが大嫌いである。発展途上国の人が、搾取同然の環境の中でやっとの思いで作っているから、「かわいそうだから、買ってあげよう」という論理に持って行ってはいないかという問いかけは、普通の人が言ったら嫌味でしかないだろうが、「日本人初のバングラディシュの大学院修了」の著者が言うと説得力がある。
 1では、著者の小さいころから、非行に走った中学時代、柔道に明け暮れた高校時代、大学、大学院生時代と続き、「メイドイン・バングラディシュ」のバッグを手掛けて、店を出してめでたしめでたしで終わるのだが、2のこの本は、「それからがもっと過酷だった」という話である。振り回され、裏切られ、ちやほやされ、右往左往する著者。学生の頃も、「アパートの中で1日中体操座りして考え込んだ」り、この本の中でも「教会で2時間ただひたすら祈って答えを求めたり」相当に追い詰められるが、「社長」としての行動(彼女の言う「哲学」にはブレがない。
 あとがきも、一読の価値がある。自分のもとには「何をやるかははっきり決めていないが、とにかく起業したい」という若者が多く訪ねてくるという。やりたいこともわからないのに、とにかく「社長」になることが目的化してしまっている若者たち。そんな甘いもんじゃないし、楽しいものでもないが、「降りられない」プレッシャーはひしひしと伝わってくる。そうした「弱音」や「失敗」をあえて出さないことで組織を引っ張ろうとするリーダーは少なくないと思うが、あえてそれを文章に紡ぎだして世に問おうとする姿勢は立派である。

 著者も言っているが、ものがあふれ、バッグも飽和状態の今、お客さんは商品に何らかの「ストーリー」を求めている。ただ、それが「かわいそう」とか「偽善」とか、「カリスマ女性経営者が作る」といったうわべのものではなく、この人たちが目指す「モノがいいから」「カワイイから」選ばれるようにならなければいけないし、そうなって初めて「途上国」は「途上国」ではなくなる。
 返す返すも、よく「裏切られる」人である。でも、それを支えるスタッフとお客さんがいる限り、きっと「3」とか「4」が出版されて、また面白いストーリーを見せてくれるのではないかと思う。ブログを読みながら、次作に期待しよう。