「赤字社員」が捨てられていく

 刺激的なタイトルだが、中身は分かりやすい「会計」の本。
 筆者は、公認会計士を持ち、監査法人で働きながらビジネススクールを出て、30歳でリフォーム会社の「財務担当取締役」としてスカウト。面接の際、社長から「ところで、君を雇ったら、うちはいくら儲かるようになるんだい?」と聞かれて即答できずに冷や汗を書いた思い出から、自分自身「会計はできても、典型的な赤字社員」だったと振り返る。
 本書の言う「赤字社員」とは、単に「仕事が出来ない社員」ではない。売り上げがあっても経費を湯水のように使って平然としている社員、あとどれだけ稼げば「給料に見合う利益」(だいたい手取りの3倍ぐらいが目安、売り上げは更にその数倍)に至るかを客観的に把握できる人、「この商品の売り上げ目標は幾らだ」と言われたら、「じゃあ、1か月に自分が売らなければならないノルマは何個だな」と即座に暗算できない人、取引先の経営状況(賃借対応表)を読んで、的確な取引が出来ない人(せっかく売れても、代金が回収できなければ全く意味がない)等々である。採用難の次に来るのは、人件費のカット。「10%人件費をカットするならば、全員の給料を下げるのか、それとも「赤字社員」を10%解雇するのか、答えは明白である」と筆者。確かに。
 我々教員の世界では、今のところ「一律賃下げ」で対応しているが、これは対岸の火事ではない。ただ、民間企業と違うのは、「強制解雇」ではなく、「自然淘汰」で人を減らすことである。精神的にも、肉体的にも「定年まで勤められる」人はどんどん少なくなっていくに違いない。よくて早期退職、悪くて病気療養、最悪の場合「再教育」と「退職勧奨」か。会社のように、貢献度が数字ですっきり見えない分、たちが悪い世界であるが、学校も「利益が減り続けてリストラが必要な企業」であることには変わりはない。「経営者アタマ」で現実を見る分には、読んでおいて損はないと思う。