エアラインの空中戦

エアライン敗戦―格安航空来襲とJAL破綻 (中公新書ラクレ)

エアライン敗戦―格安航空来襲とJAL破綻 (中公新書ラクレ)

 学生の頃、バンコクからシンガポールまで2泊3日でバスに乗ったことがある。
タイ領内はリゾート目当ての外国人が多かったバスは国境の町で乗り換えると急に庶民的になった。
お値段は¥5000也。飛行機の4分の1だった。
 今、クアラルンプールを拠点にアジアを席巻している「エア・アジア」社。バンコクシンガポール
間で最も安いフライトで¥1500。本当にそれで儲けが出るのか、危ないんじゃないのかと考えるのは日本人の発想。
東南アジアに限らず、ヨーロッパやアメリカでは「LCC」と言われる超格安会社が台頭して、「空のバス」になっている。
 日本にLCCは到来するのか。LCCねらいを打ち出した茨城空港には、今のところ引き合いはない。静岡空港関空、羽田の拡張後、需要を奪われる成田などは、LCCを呼び込む地理的条件(大都市からちょっと離れていて不便)は兼ね備えているものの、なにぶん空港使用料やら発着枠やらがうるさいので、ほとんど見放されている状態であると言ってよい。地元の住民に補助金を払って高い既存の路線に乗せるくらいなら、空港使用料やら燃料費やらを思いっきり差し引いてLCCを呼ぶしかないと思う。
 本書の巻末でシミュレーションしている東京〜福岡¥1500(ただしソウル経由)なんて時代が来たら、確かに日本人のライフスタイルは大きく変化するに違いない。でも、バンコクシンガポール¥1500が普通に実現している今、その気になれば実現するアイデアである。ただし、日本の航空行政にはその気はなさそう。「敗戦」ではなく「不戦敗」。ガラパゴス化はIT機器だけではない。