物理って面白い!

あなたにもわかる相対性理論 (PHPサイエンス・ワールド新書)

あなたにもわかる相対性理論 (PHPサイエンス・ワールド新書)

脳科学者の茂木健一郎氏が科学者を目指すきっかけになったのが、「アインシュタインの伝記」だったそうである。「科学者はロックンローラーでなければならない」(既存の常識や権威に対して真っ向からはむかい、情熱を燃やす)という信念の下、それまでの「常識」だったニュートン力学に疑問を持ち、「相対性理論」を生み出したアインシュタインのパワーを、「アインシュタイン力」と名付けて、彼の生い立ちや生活、「世界一有名な公式」とされるE=MC2についての解説など、内容は多岐にわたる。

 高校で物理を取らなかった(選択肢になかった)文系人間が読んでもなかなかにわかりやすい。元は茂木氏の語りを編集者が聞き書きで起こしたものなのだそうだが、茂木氏がいかにアインシュタインに惚れこんでいるか、彼の「ロックンロールな生き方」にいかに惹かれたかがありありと伝わってくる。最初、職業「科学者」(大学教授など)としてのキャリアを歩まず、一介の公務員として働きながら「思考実験」(頭の中の実験)を繰り返した日々、彼の名を不動にしたわずか3ページの論文には、一切「参考文献」が載せられていなかったことなど、その「生きざま」には元気づけられるところが多い。
 「運動」「時間」「光」など、聞くと「うっ」となりがちな物理の世界。この本は挿絵もわかりやすく、「物理って面白いなあ」と素直に思える良書である。ビジネス書のPHPが理系にチャレンジしたシリーズの第一作。編集者の意気込みが感じられる一冊だった。こんな本を、コンビニでさりげなく売っているのもなかなかにニクイ。