「ギャル」というトレードマーク

ギャル農業 (中公新書ラクレ)

ギャル農業 (中公新書ラクレ)

 とても「一本義」な人である。

 農作業の開始が午前5時ならば、4時に起きて1時間近くかけて「ギャル化粧」をしてから畑へ行く。なぜなら「そうしないと気合が入らないから」。高校時代から何を言われようと貫き通した「ギャルファッション」。アルバイト先でも絶対にそれを落とさず、「ギャルでもちゃんとやることはやる」ことを認めてもらうために頑張った著者。掃除もすれば営業もする。バイトで貯めた資本金を基に、自分で会社登記をし、二十歳そこそこで「ギャル社長」として成功した著者。マスコミに取り上げられ、「次は農業だ」と決めて社長を退任。本人としては一本の直線状にあるのだろうけれども、テレビ局を連れて畑に行くと「農業をなめるな」とコテンパンに怒られてへこむ・・・。

 この人が支持を受けるのは、「大人の言うことをちゃんと聞いて、それなりにへこむ」からだと思う(でも、曲げないところは曲げない)。受け流す若者が多い中ですごいことだと思うし、彼女の頑張りで「ならば」と共感する人達が出てくるところはいいことだと思う「ギャルママ農業」は、ナイスだ。秋田(ハチ公のふるさと)で作ったから「シブヤ米」、「日本一」の富士山のふもと(富士宮)で野菜作りなど、世間が飛びつくような話題を提供するセンスもうまい。

「ギャル」というイメージをトレードマークにして、そこを扇の要にして活動をしている。「私の活動に、日本のすべての”ギャル”の地位がかかってるのよ」という気概がみなぎっている。自分の「カリスマ性」を自任している。この本も、きっと彼女の中では特別なことではなく、一本の直線状にあるのだろう。
 
 先週末、著者が富士市内で講演された。行きたかったのだが「満員御礼定員オーバー」で行けなかった。一時のブームにならず、この人がいい感じで歳をとって、末永く農業をPRしてもらったら、いいと思う。