陛下はこれだけ忙しい

天皇陛下の全仕事 (講談社現代新書)

天皇陛下の全仕事 (講談社現代新書)

 1か月前のアポがなければ外国の要人ですら会えない(ということになっている)天皇陛下。ゴリ押し云々はともあれとして、「確かに、こりゃ大変だ」と思える、元皇室担当記者のルポ。
 冒頭、陛下が日常的に行っている「大使の面会」がなかなかに面白い。外国の元首の「特命全権」大使さんは、日本に来た時、日本を去る時、皇居に行って挨拶する。その数年間約70人。日本政府も大使の晴れ舞台に最大限の礼節を尽くすため、どんなに小さい国の大使でも、皇居に行く時はまず東京駅の貴賓室(そんなもんがあるんだ)に集まってもらい、そこから「馬車」で送り迎えをするそうな(菊のご紋入りのロールスロイスというオプションもあるが、大抵の大使は馬車を選び、これがすこぶる評判がいいらしい)。
 と、どんな小さな国の外交官クラスにも分け隔てなく接してくれる日本の天皇陛下。だからこそ中国の要人は会えるのを楽しみにしたのだろうし、「会う」ことで自分のステイタスを高めると期待したのだろう。逆に、「一外交官ですら会ってくれるのに、自分に対しては“前例”だか何だか知らんが会ってくれなかった」となれば、メンツを気にする中国人、そりゃーご立腹(中国大使館員は胃に穴が開く)というもの。
「お疲れ」の陛下、外野の大騒ぎはさておき、今日も淡々と大量の校務をこなされていることだろう。