ユダヤ人とダイヤモンド(幻冬舎新書)

ユダヤ人とダイヤモンド (幻冬舎新書)

ユダヤ人とダイヤモンド (幻冬舎新書)

 著者は商社で永らくダイヤモンドの取引にかかわった人。
イスラエルへの取材、オランダのダイヤモンド市場での聞き取りなど、自身の人脈を生かして、ダイヤモンドビジネスとユダヤ人の現代史を解説。前半は著者の取材記、後半は、19世紀から20世紀にかけてのダイヤモンドとそれに関わる人々のドラマを読み切り形式でつづる。
 インドやブラジルなど、ごく限られた場所で出ていたダイヤモンド。南アフリカでの発見を皮切りに世界の勢力図が変わるとともに、原石のカットと磨き方が洗練されていくことで、関わる職人の増加と競争が激化していった様が興味深い。流浪の技術者集団にして金融家のユダヤ人にとって、ダイヤモンドは「携帯可能な財産」だった。故に戦時下ではユダヤ人を囲い込んだり、財産を没収するうねりが続いた。「ナチスのダイヤモンド略奪作戦」のエグさはすごい。