観光再生を志す人の入門書

黒川温泉 観光経営講座 (光文社新書)

黒川温泉 観光経営講座 (光文社新書)

九州・熊本の山あいにある24軒の温泉地、「黒川温泉」がなぜ若者に支持されるのか。
温泉組合のリーダーである旅館経営者と、「温泉教授」として全国の温泉に関するコラムを書きつづける大学教授の対談。
目を引くのは、この温泉の経営者達がひたすら「木を植え続けている」ということ。山あいの村は、儲かるからということで、杉やヒノキの人工林を増やし続けた結果、温泉地自体が薄暗いものになってしまったという反省のもと、広葉樹の雑木を数万本単位で植林し、かつすべての宿に露天風呂を設置させて「自然の中の温泉」を「そうとは分からないように作り変えた」プロセスには目を見張ります。

ただ、上手くいったところには影もつきもの。「黒川温泉」の名を語って、近所に「温泉つき別荘地」が乱立。湯量は減るわ、ただのリゾート地が侵食してくるわと、経営者は頭を抱えます。「第二の湯布院にはなるまい」という気概、学生時代、別府・湯布院で観光地理学の調査に明け暮れた身としては、響くものがあります。

人は温泉に何を求めてやってきているのか、お客さんが「すごい」(いかん)と思うのは、駐車場を降りた第一印象で決まり、後はどんなに頑張ってもそのイメージを変える事は出来ないなど、なるほどなあと思わせる言葉が並びます。「観光」関係をやりたい高校生は必読。

富士市図書館B689.2194