地球の内部で何が起こっているのか
- 作者: 平朝彦,徐垣,末廣潔,木下肇
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2005/07/15
- メディア: 新書
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2学期冒頭に、暑い視聴覚室で見せた映画『日本沈没』。あれに登場して大活躍する深海掘削船「ちきゅう」号の事が書いてある本だということで手に取りました。
前半は、プレートテクトニクス論というのはどうやって生まれたかといった話や、日本近海の地震のお話。いろんな入門書で読める話です。面白いのは後半からで、「深い海の底を掘りぬいて、えらいお金の無駄遣いをするなあ」(と、日本人初の宇宙飛行士・毛利守さん談)としか思えない人向けに(?)、地殻をくり抜くことで分かる未知の世界を丁寧に説明しています。
面白かったのは、生物学的な利用です。海面下5000mの地中でも、ちゃんと生きている微生物がいるそうです。光はもちろん、酸素もなく、100℃を越える高温(でも圧力が高いので水は沸騰しない)で生きている生物達は、まさに今から数十億年前の、地球が真っ赤な火の玉だった当時に生まれた原始生物そのものなのです。『日本沈没』の中で、草なぎ君がしみじみと「深い海の底ってはタイムマシンなんだよね・・・・。」と言っていたのは、「ああ、こういうことか」と分かりました。
「マントルに到達するというのは、今の大学生や中学生を含めて、次世代の人材が地球科学を志して、やっと達成できることだと思います。10年、20年といったスパンで考えなければならない。我々には、後進を教育しなければならないという義務があるわけです。」
著者の一人、平野氏はコラムでこう述べています。壮大なる地球の営みと関係者の努力を、4択問題の解き方テクニックの伝授に矮小化しがちな私としては、なんとも耳痛いお言葉でした。
参考文献や用語集も充実しており、「自然地理のミニ事典」としても使えます。「いやー、勉強しなきゃな」と思わせてくれる一冊。地理で教育実習をする学生さんにもお勧めです(恐らく春の実習はこの辺ですよ)。