「リクルートの江副さん」はプロである。

リクルート事件」とは何か。高校政治経済、いや日本史に入るかもしれませんが、その渦中の人物である、江副元社長の近著。好き嫌いはともあれとして、「不動産ビジネス」で鳴らした著者による、最近の都心の新築ビルや再開発に関する格好のガイドブックになっています。
 「都心のビルは建設ラッシュで“床”が次々に生産されている。臨海部では埋め立てが進み、土地が“生産されている”。郊外には打ち捨てられた土地が増え、故に、いずれ土地の値段は下がる(バブル崩壊の再来!)」というのが、ごくごく大まかな趣旨です。有明・晴海を抱える江東区は、昭和22年に、22平方キロメートルだったものが、平成19年には39.8平方キロメートルと、1.8倍に増えている等、デベロッパーらしく、具体的な数字がところどころに登場し、経済新聞の解説記事を読んでいるような感じになりますが、「都市地理」の教材ネタとしては、大変使い出があります。建築基準法の話や用途規制など、「建築学科に行きたいという理系の生徒」にもぜひ読ませたい一冊です。
 それにしても、三菱(丸の内)や、三井(日本橋)が、明治の頃から持っている土地は、簿価では私のお財布の中にある金額で記載されているというのはちょっと驚きでした。どんなに暴落しようとも、もともとの簿価がただみたいなものですから、売らない限り損はない。しかも、今の東京駅あたりが軍用地で、買い手がつかないのを三菱がしぶしぶ買った等、「へー」と言いたくなるお話も満載です。
 Google Earth片手に、目当てのビルを探しつつ読むと、結構楽しいですよ。(↓こんな感じで)

ビルのうんちくを書き込めば、なおよろしいかもしれません。暇なときに教材化してみようと思える一冊でした。