「撤退」戦の戦い方
- 作者: 日経コンピュータ
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2002/12/06
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- 作者: ソフトバンクアカデミア特別講義
- 出版社/メーカー: 光文社
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「日経」シリーズには、「日経ビジネス」に「敗軍の将兵を語る」という大変面白い連載があるが、あれのコンピューターシステム版と言える。
後者は、ソフトバンクの孫社長が後継者養成のために始めた社内学校での講演を基に新書の編集部がまとめたもの。
共通するのは、「これは失敗だ」と思った時、責任の所在がはっきりして、トップが「やめる」決断ができたかどうかである。孫氏の言葉を借りるなら、「ぼろくそに言われようが何をしようがすべてかぶる」ことである。「こんなにお金をかけたのだから」「一度動き出したものなのだから」と、ずるずる引きずれば引きずるほど傷口は悪化して行く。そもそも、コンピューターだからと言って「完璧」なわけがない。何十億円もの開発費を「どぶに捨ててしまった」ような事例も出てくるが、それを大損と見るか、早いうちの「損切り」と見るかは、経営者の力量になるのだろう。
ソフトバンク自体のシステムトラブルについて見ると、「ヤフーBB」のトラブルが興味を引く。社運をかけて挑んだプロジェクトで、驚異的な安さで募ったところ、申込者が殺到してダウン。派遣社員が顧客データを流出させるなどのトラブル続きの船出に孫社長が採った策は「なるほど」と思えるものだった。順風満帆の大企業のように見える会社も、ありとあらゆる決断と選択の上に成り立っている事が分かる。
「産業革命」の初期の頃に巻き起こった、笑ってしまうようなトラブルも当時の人は真剣に取り組んでいたように、もう何十年かすると、コンピューターシステムのトラブルも笑って流せる時代が来るかもしれない。ただ、いつの時代も失敗を失敗と認め、更迭するのではなく再チャレンジの場を用意する(ソフトバンクは「異動」はあるが、基本的に「リストラ」はないという)リーダーの懐の深さが組織の命運を分けるように思える。