あっと驚く結末。きな臭さ120%の歴史小説

 

雷神の筒 (集英社文庫)

雷神の筒 (集英社文庫)

 織田信長に射撃を教え、自ら鉄砲隊を率いた尾張の侍、橋本一巴(いっぱ)。実際は、「信長の砲術師範」という程度の記録しかないらしいが、合戦や歴史上の出来事と絡め合わせて、壮大な人物伝に仕立てている。
 鉄砲は銃があれば使えるわけではない。火薬を作るための塩硝(しょうえん)を調達し、玉の鉛も買い占めなければならない。「死ねや」と信長に嫌われ続けながらも生き永らえ、殺生を重ねる苦悩と家族愛を持ち合わせながらも生き続ける一巴。ライバルとの対決、壮絶な虐殺戦、そしてあっと驚く結末。
 文字通り、きな臭く、男臭く、脂っこい時代物。「まったく、信長って奴は・・・・」と思いつつも、最後までハラハラドキドキ大満足の一冊である。
 人物だけでなく、「場所の描写」もしっかりしている。種子島岐阜城、合掌造り集落、石山本願寺(後の大阪城)など、日本史でただ「用語」として出てくる場所が一体どんな使われ方をしていたのかが良くわかるのもよい。