欧州のエネルギーシフト
- 作者: 脇阪紀行
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2012/06/21
- メディア: 新書
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「フランスは原発依存度が高く、ドイツは脱原発。でも、電線は国境を越えてつながっているからドイツはフランスから原発電力を買っている・・・」地理の授業ではお馴染みの「常識」だが、そもそもなぜフランスが原発に傾倒するようになったのか、ドイツは“フランス依存”の脱却のためにどんな戦略を取ろうとしているのかなど、「なるほど」と思わせるところが多い。また、「風力のデンマーク」のスマートグリッド、氷河湖はあるのに落差がないため水力発電ができず、ロシアからの電力輸入に頼るフィンランド(世界で初めて使用済み核燃料の最終処分場を建設)、衰退した工場跡地を「エコシティ」として再開発して若者を引き寄せるドイツの取り組みなど、新聞の外報面「特集」を一冊にまとめたような構成で、どこからでも読める。
ヨーロッパにとって「チェルノブイリ」がいかにインパクトをもたらす事件であったのか、そこから綿々と議論と技術革新が積み重ねられて今日があることを筆者は指摘する。日本の「フクシマ」の悲劇を足がかりに、単なるYesかNoかではなく、何をどうしていくべきか真剣に考えなければならないと思わせる。